「進路の件だが、俺のほうでもいろいろ探してみたんだ」
わたしの背後に立っていた女子生徒は、先生が副担任を務める隣クラスの女の子だ。
目立たなさそうな眼鏡をかけて、先生が前に来るだけでうつむいては恥ずかしそうにしている。
「まだ諦めるのは早いぞ。なんでも相談しろよ、俺もできるかぎりのことをする」
「あ、ありがとうございます。一浦先生…」
先生のせいで吹けなくなっちゃったの。
先生が他の女の子と楽しそうにしてるから、また下手くそになっちゃったんだよ。
わたしにはサラッと挨拶を返して、小野寺さんには丁寧に接する。
ハルトを背負いながら、苦しくなって逃げた。
「皆木、もう正直に言うぞ」
「…はい」
「僕にとって君は生徒のなかでいちばん可愛くはある。だが、いまの皆木をコンクールメンバーには入れられないな」
綾部先生はハッキリと、わたしに告げてきた。
だからやれ、と。
名波 玲音にだけは負けるなと、そう遠回しに伝えてくれていることは分かっている。



