それであんなにもトロンボーンが吹けるって言うの…?
今年から転向をしたのなら、わたしよりトロンボーン歴は浅いはずなのに。
才能があるとは、彼のような人間ことを言うんだろう。
「にしても皆木先輩、ほんと下手っすよね。なんであんな初歩的なこと言われるかなー」
「……ごめん」
「あ、でももし俺がコンクールメンバーに選ばれた場合は皆木先輩に譲るんで」
とんでもない発言に、わたしは思わず眉をぎゅっと寄せてしまった。
「嫌ですもん、熱心に指導されんのとか。そーいうのってめんどいしサブいから嫌いなんですよ俺」
「……なら、吹奏楽部じゃなくていいじゃん。ひとりで楽しんでれば」
「だって鈴高の吹部ってだけで目立てるでしょ?男子が珍しいから女子にもモテるだろーし」
こいつ………、ナメてやがる。
名波くんのほうが上手だとは分かっているけど、そんな譲られ方は嬉しくない。
だったらライバルとして真剣勝負をして負けたほうがマシだ。



