「すぐ行くっ!待って───、」
取られたのは、スマートフォン。
驚いているあいだにも、先生はわたしのスマホを耳に当てて口を開く。
「然か、俺だ。じつは昨夜いろいろあって、皆木は俺と行動してたんだ。…こっちのことは任せてくれていい。今日は部活も休みだから、おまえも家でゆっくりしろよ」
そして切られた。
然くんの傷ついた顔が、わたしの脳裏には浮かぶ。
「…飯の途中だろ」
「でも…、然くん、」
「行かなくていい。…おまえは午後から部活あるんじゃねーの」
行くなって、言えばいいのに。
だってすごく怒ってる顔してるよ…?
然くんからの電話だと分かって、わたしが然くんの名前を呼んだあたりから。
“先生”なんて言えないくらいの顔、してる。
「は、遥人くん…」
スープを飲もうとしていた動きが、止まる。
呼ばれて迷惑そうな顔だってしていない。
教師と生徒でいたいなら、普通は先生であれば「名前で呼ぶな」と叱っていいはずなのに。
これ以上踏み込むなと、生徒を止めるべきなのに。
あなたはそれを、いつもしないよね。



