お母さんが忙しい人だったから、わたしは小学生の頃からわりと自分でやることが多かった。
いつもお仕事でお疲れのお母さんにご飯を作ってあげたり、最初はそんなふうにお母さんを喜ばせたかった気持ちが大きかったような気がする。
高校に入ってからは部活でわたしのほうが忙しくなっちゃったけれど、腕は鈍ってないということだ。
「ど、どう…?」
「………いや、」
「い、嫌…?」
「…いや、驚いてる。こんなうまいとは予想外だった」
「やった!ふふっ、いつでもお嫁さんになる準備できてるよにいなちゃんは!」
胃袋は掴んだと、ガッツポーズ。
それは結婚においてかなり大切なことだって何かで見たし、料理ができる女の子を嫌いな男性はいないとも。
そのときピリリリーーーと鳴ったのは、昨夜からリビングに置きっぱなしだったわたしのスマートフォンだった。
「ん…?部活のことかな…?───あ、然くん!」
確認して、すぐに応答ボタンを押す。
そうだった…、
然くんはずっとわたしのことを心配してくれてたんだ…。



