あの放課後、先生と初恋。





「校長室に乗り込もう!?今ならまだ間に合う!!」


「乗り込んでどうするんだよ」


「決まってますがな!!わたしのクラスの副担に戻してもらうのっ!!こうなったら戦いじゃあああああ」


「やめとけアホ。おまえが退学になるぞ」



先生はわたしと離れて寂しくないのかな…。

やっぱりこんな気持ちになるのはわたしだけ…?


7歳という年の差と社会人で大人というものを感じるこの瞬間は、とてもモヤモヤする。



「最後の1年。部活も頑張れよ」


「………うん」


「……皆木、」



肩をガックシ落とすわたしに、先生は困ったように笑いかけてきた。



「離れてても飛び抜けて聞こえてくんのが、おまえの音だろ」


「……下手くそってことか」


「当たり」


「おいっ!!」



こういう言い合いも、しょっちゅうはできなくなりそうだ。


わたしも今年は3年生。

個人練習は少なくなるだろうし、先生も他クラスの教室にわざわざ顔を出すことはしないだろうから、あの放課後を当たり前のように味わうことはなくなる。