そんなのするならサッカーの練習をしていたほうがいいと、俺は正直行きたくなんかなかった。
でもそのとき、試合前の球場外でひとりの生徒から熱心に指導を受けている、なかなか上達しなさそうな吹奏楽部の女子生徒がいて。
『すごいよな、ああいう人って…』
俺は昔から天才肌と言われ、小学生の頃から所属していたサッカークラブでは必ず名前が上がっていた。
勉強が苦手だったぶん、部活動に力も入れている進学校で有名な鈴ヶ谷高校にもスポーツ推薦。
だから鈴高でああいう人を見るのは逆に珍しいことだった。
『やば、サポーター忘れた』
『えっ?おい然ーー?』
『ごめん先帰ってて!』
それは夏休みに入った日のことだ。
俺は部室にサポーターを忘れてしまい、とくに夏は忘れると洗濯できないと言って母さんに怒られるため戻った。



