あの放課後、先生と初恋。





………うん。間違ってはないけども。

それにサッカー部の子たちは顧問が彼だからこそ、先生先生って恋をしてるわたしのことは目に入るのかも。



「吹いてくれませんか」


「え…?」


「…なんでもいいので、吹いて欲しくて」



言われてすぐ、わたしはケースからハルトを取り出した。

そうしていいなら最初からそうしていた、というのが本心だった。


言葉よりもそっちのほうが届くんじゃないかって、でもわたしはまだ下手だから言葉のほうがいいのかなって。


応援歌のなかでもわたしがいちばん気に入っているもの。

力いっぱいのエールを込めて初めてのソロ演奏をした。



「ふれーっ!ふれーっ!!ガンバレガンバレ鈴高!!ファイトーーー!!」



楽器を離して、今度は言葉でも。

みんなジロジロと見てくるなか、わたしにできる精いっぱい。



「……ありがとうございます。なんか、治った気がします」


「こ、こんなのでいいなら何度でも吹くよ…!」