「正直なところ、顧問が変わって良かったと思ってるんだ私」
隣を歩いていた心菜は小さな声で言ってきた。
もうこのあたりは誰もいないよと笑いながらも、わたしは耳を傾ける。
「そうじゃなかったら…、きっとにいなは定期演奏会のメンバーにもしてもらえてなかっただろうから。それは和久井先生の気分とか、私情で」
合宿ではあんな態度を取ってしまったわたしだから、もし今も和久井先生が顧問だったならと考えると怖くもなる。
完全に嫌われちゃってたんだろうな、わたし…。
「綾部先生はすごくクセが強いけど、生徒の良い部分を見つけられる先生だと思うの」
「わたしもそれは思う!」
「うん。頑張ろうね、にいな」
「辞めて欲しい」が、「頑張ろうね」に変わった。
諦めずに続けてよかった…。
これに尽きる。
────そして迎えた定期演奏会、当日。
「トイレどこおおおお……っ」
なんか会議室みたいなところに来ちゃった……!!
この町の文化ホールには去年も来たことがあって、大きいなあと見上げた思い出がある。



