あの放課後、先生と初恋。





「伸ばせ伸ばせ伸ばせ!!」


「っ、」


「まだ伸ばせ、いける!いいかっ、きみの腹はひとつの大きな風船だ!!」


「っ!!」



どこまで伸びるんだと、窓の外にやって来た小鳥たちも注目していた。

それほど一定した力強い音量で、わたしは吹くことができているのだ。


ただ綾部先生の言うことを徹底させてきただけなのに。



「トロンボーンはメインにもサブにもなれる多彩さが味だ。ポップにもジャズにも対応して高音も低音も出すことができる、つまり演奏者によってどこまでも進化する楽器なんだよ」



気持ちよかった。
とても気持ちがよかったんだ。

初めてあんなふうに思った。


吹き終わったあと、達成感で全身がビリビリと喜んでいる。


「それはただの酸欠じゃないか」と笑った、先生。



「でもわたしはよく…、トランペットのほうがいいって…言われます」


「ああ、素人は言うだろうな。きみのいちばんは底知れぬ肺活量だというのに。いいか?アルトを響かせるトロンボーンに必須条件は肺活量だ。きみが持つ驚異的な肺活量をボーンに使わないでどうする」