あの放課後、先生と初恋。





生徒たちはいまだに彼女がどうして学校を辞めたのかを知らない。

そして娘である2年生は、あの一件があってから吹奏楽部を退部した。



「じつは………」



経緯を話す。

先生もなんとなく新しい顧問のことはウワサ程度に知っていたみたいで、真剣に聞いてくれた。



「正しいのか、その先生は」


「…わかんない、けど」


「言うこと聞いちゃってるもんな?」


「………うん」



そこには理由があった。


別に無視っても良くない?
しれっと参加していいんじゃないの?

なんていう、仲間たちの声もあったけれど。



「おーい、ランナーーー!サボるとはいい度胸じゃないかーー」


「っ!!サボってないです…!休憩です!!」


「こっちも休憩は終わりだーー。ちゃんと見てるぞーーー!」



ちゃんと見てくれている。

それがどれだけわたしにとって嬉しいことか。


邪魔者扱いのように放っているわけじゃない証として、今みたいに音楽室の窓から何回か声をかけられるのだ。


正しいかは分からない。
でも、間違ってはないとも思う。

………できれば「ランナー」って呼び方はやめて欲しいけど。