…………どこの野心家さん…?
ジャングルから帰還でもした……?
と思ってしまう、古びたコートにぐしゃぐしゃな髪をして整わない髭面のおじさん。
音楽室のドアに寄りかかっては、私たち吹奏楽部を煽りに煽ってきた。
「あの、部外者は立ち入り禁止なんですが…」
「はははっ、失礼だなきみ。僕は今日から顧問に任命された崇高な神様的存在だというのに」
失礼って、どっちがだ。
なにが神様だ。
なに言ってんだ、このひと。
「顧問……って、何部の、ですか」
普段そこまで表情が変わらない肝が据わった元部長さんまでも、あからさまに動揺していた。
「おいおい、ここは吹奏楽部じゃないのかい。あれ?鈴高はバレー部が演奏でもするのかよ」
「………………」
え、え、え、え。
たぶんみんな感じた気持ちは一緒だ。
一心同体だった。
「んじゃあさっそく、ザコすぎる演奏に指導でもさせてもらおうか」
「ちょ、」
「うわあきみ、近くで見ると意外とハンサムだな。いいね、じつは僕はそっち気質もあるんだよ」



