「サッカー部もこれから大事な大会があるんでしょ?ふふっ、わたしもしかしたら応援団としてブラスバンドするかも!」
「ああ、…そんときは頼むわ」
「お任せくださいっ」
覚えなくちゃ、応援歌を。
だいぶ音符を読めるようになったし、ト音記号にヘ音記号、強弱のマークとか、ゆっくりゆっくり暗記している。
そのときはフィールド上に先生が走ってると思いながら、たぶんわたしは吹くんだ。
「…皆木、」
「んっ?……っ、わっ、…えっ」
ふわりと、頬に触れたのは。
紛れもなく男の人の手で、骨ばんでゴツゴツしているけれど繊細にも思える手。
それは、先生の手だ。
確かに1回だけ撫でてきた……よね?
「…チョークの粉、ついてた」
「あっ、ええっ、…恥ずかしい」
思わずうつむいて、ぐいっと頬を拭う。
部活に必死すぎて身だしなみを気にかける暇なんてなかった。
好きなひとの前ではいつだって可愛くいたいのに、ああもうヤダ……。



