『和久井先生には俺からも言っておくから、皆木は気にせず俺たちと練習な。なんとなくでも音さえ出せていれば、先生もスルーしてくれるよ』
そして部長さんの言葉が強かった。
あ、モテるわこれは……とシンプルに思ったほどの信頼感と安心感。
先生には認めてもらえないけれど、仲間たちには少しずつ認めてもらえるようになっていた。
「ハルト、今日もありがとう。綺麗にしてあげるからね~」
「すごい可愛がってるね、皆木さん」
「坂田さん!坂田さんのフルートも上品で可愛いっ」
「でしょ?うちの子はルルっていうの」
部活が終わって楽器の手入れをする時間が好きだ。
名前をつけると、こうして無意識に声をかけてしまっている。
吹けるようになって使う頻度が増えるたびに、そのぶん愛着が積もってゆく。
坂田さんの上品な横笛───ルルちゃんと仲良くできたらいいねえハルト、なんて言ったりして。



