泣いてくれたほうが教師としても助かるが、皆木はなかなか泣いてはくれない。
子供らしく涙を見せたほうがラクになるとも思うのに、そうはしないのが皆木 にいなだった。
それがあいつの強さでもあるが、俺はたまに不安にもなる。
「おや、珍しいですね。ふたりで何を話しているんですか?」
「っ、あ、いえ…、なんでもないの」
俺たちだけだった職員室に、社会科の中年教員が混ざってきた。
パッと顔を逸らした和久井先生は、どこか都合が悪いことでもあるのかといった顔をしている。
「…そうですか。一浦先生、これ、サッカー場に生徒のものと思われる落とし物があったそうで」
「…ああ、すみません」
「まったく、教師にも夏休みが欲しいもんですよねえ」
めんどくさそうな長話が始まりそうな予感に、俺はとりあえず荷物を持って職員室を出た。
まだ引っ越しの荷ほどきが完全に終わっていないから、帰っても仕事は山積みだ。
………まさか隣に住んでいるのがよく知る生徒だったとは驚いたが。



