どんな伝統だ、とツッコミたくもなったがやめた。
年齢も俺より年上。
指導者としても教師としても経験がある。
けれど俺のほうが“先生”だと思った。
「俺は不得意な生徒がいたら、その子に向いている練習メニューを考えて悪いところじゃなく、良いところを見つけて伸ばしてあげます。…それが指導者の役目だとも思っていますから」
決して馬鹿にはしない。
“どうしてできないんだ”は、ただのこちらの感情論だ。
そんなものを生徒にぶつけたところで意味がない。
生徒ができないのは教え方が悪いから。
俺たち指導者は常にその責任と意識を持って指導に務め、生徒の責任と意識を同じように育てていく義務がある。
「認められなくても、せめて皆木を吹奏楽部の一員として扱ってあげてください。お願いします」
「……どうしてあなたがそこまで」
「…彼女の努力だけは、俺は和久井先生より知っている自信がありますから」



