「和久井先生」
職員室に戻った俺は、残った事務作業を片付けてから時計を気にしていた。
大会が近い吹奏楽部は文化部のなかでもいちばん長く学校に残っているが、今日は思ったより早くに現れた顧問。
「どうかしたの?一浦先生」
「うちのクラスの皆木のことで、少しいいですか」
「ミナギ?…ああ、皆木ね」
なんとも気にしていないかのような口振りに、俺は若干と感情が動かされそうになった。
覚えててやれよ。
あんたの大事な生徒だろ。
「合宿で皆木が和久井先生にずいぶんと失礼な態度を取ったようで」
逆だ。
あんたに失礼な態度を取られたのは皆木だ。
だとしても、俺より和久井先生のほうが教師としても先輩。
下手なことが言えないのは仕方ないことでもあった。



