あの放課後、先生と初恋。

遥人side




いつも聞こえる音が、滅多に聞こえてこなくなった。

外でサッカー部の指導に入る俺の耳には、必ずと下手くそなトロンボーン音が聞こえていたというのに。


なんだか落ち着かない日々は、夏休みに入ってからだ。



「……いねーのかよ」



部活を終えてグラウンドから校舎、2年の階に向かってみても人の気配はしなかった。

ブーブーとつたない音が、今となっては俺の精神安定剤になりつつあったというのに。


教室に入っても、いつもいた女子生徒はいないようだった。



『強制的に退部、させられちゃうかも……っ』


『お母さんのことっ、うちのこと、楽器のこと馬鹿にしてきたから…っ、先生にすごいこと言っちゃった……』



諦めるなと、俺は言った。

頑張る皆木を見ていると、気づけばいつもそんなことを言ってしまっている。


初めてあんなにも弱音を吐いて、悩める年相応な顔をしてくれたというのに。


がんばれって、なぜか言っちまうんだよなあいつには。