騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 時間というものは思っている以上に早く進む。気が付けば、もう隣国使節団が来訪する日となってしまった。

 こういった日は、王城騎士団は正装を身にまとう。白い制服に、片側の肩にだけかけるマント、ぺリースをつける。このぺリースは普段身につけている制服と同じ色のため私達は緑となる。対して、普段白い団服を身に着けている近衛騎士団員達は黒い正装だ。

 早朝から私達は集合し、厳重な警備を行う。そして時間になるとお出迎えとなるため、王城門前の端に第一、第二、そして第三騎士団員達が並ぶ。いつもは顔を合わせれば一番に喧嘩になる第二騎士団も、今日は緊張感を持っているため速やかに並んだ。

 狩猟大会後のナイトパーティーで一悶着あった第二騎士団副団長とは顔を会わせたくはないが、今日は仕方ないな。

 そして来訪された、隣国使節団。私の前はすぐに通り過ぎてしまうので一瞬でしか見られなかったけれど……おかしい。一人、足りないような? 今回は第三王女と第二王子がご来訪されるはずだったのに、その第二王子の姿がなかったような。

 私の見間違いだろうか。


 その後、すぐさま決められた持ち場に散り散りとなった。私の持ち場は後宮の建物の外、ガストン先輩と二人で担当する事となった。の、だが……


「あんれ、マーフィス嬢じゃないですか。あぁ、マーフィス卿だったかな?」

「……」


 私達に寄ってきたのは、騎士団用の正装をを着た若い男二人。しかも、マントの色は青。まさしく第二騎士団の団員だ。まるで見下すかのようないつもの視線を、隣の先輩ではなく私に浴びせてくる。

 今は隣国使節団が来訪して大変だというのに、この男共は緊張感を持っていないのだと思うと呆れてものも言えない。頭は大丈夫?


「可哀想に。今パーティーやってるってのに、こんなところに立たされちゃってさぁ」

「ダメだって、ご令嬢は男爵家なんだからいいドレス買うにもお金がないくらい貧乏なんだぜ? この前だってようやく買えた渾身のドレスを台無しにしちゃってさぁ……つくづく、ドレスが似合わないご令嬢だな」

「はっ、騎士団の制服がお似合いですよご令嬢?」


 果たして、この男共をぶん殴ったら私に非はあるだろうか。こんなに忙しい時に緊張感なく頭の中お花畑だったから気合いを入れ直してやった、と言えばお咎めなしになるだろうか。

 とはいえ、それではこいつらが騒ぎ出して面倒になるな。それはやめておこう。私はこいつらより大人だという事はよく分かった。


「私は騎士です。任務を全うするのが騎士の仕事ではないのですか」


 そう、今は任務中だ。それも分からないとは言わせないぞ。

 だが、そんな私の返答にあまり面白くないような顔を見せてきた。


「ちっ、コネで入ってるようなやつに……」

「コネ? 私がコネで入ったと思ってるんですか」

「何が違うんだ。女のお前が正当に王城騎士団入りなんて出来るわけないだろ!」


 まぁ、私の父親は元々近衛騎士団員だし、今は騎士団を抜けてはいるけれど騎士の役職を持ちつつ田舎暮らしを満喫している。

 そんな父のコネで入ったと思っている奴らは、この騎士達に限らず大勢いる。

 ……が、さすがに会のお父様がコネで私を入れるだなんて事は、絶対にしない。私の口からコネなんて言葉が出てみろ、1週間、いや、2週間、一日中剣を握らされしごかれるの一択だ。