騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 何だか、こう実力を見せつけられると自分がいかに未熟なのか思い知らされてしまう。

 騎士として入団した時から、憧れの存在だった。団長様は厳しくて怖い人だからと言われてたけど、それでも父が所属していた近衛騎士団に入れたらいいなぁ、と思ってはいた。

 だから余計、自分がこの程度の力しかない騎士なんだと痛感させらされた。でも、ここで落ち込んでいられない。せっかく、近衛騎士団の任務に参加させてもらったんだから。失敗してしまった事もあるけれど、それは絶対に忘れない。


「あっあのっ! さっきの男性の事でご報告がありますっ!」


 下に向けていた視線を上げると、目の前の団長様がこちらへ迫ってきていることに気が付いた。両足を、団長様の両足で挟まれ、両手を私の背にある壁に付き顔が接近していた。


「開けたのか」

「いえ、鍵をかけてから私は一度も開けていません。ちゃんとかけたことも確認しました。ですが、何故か入ってきてしまって……」


 団長様の、鋭い視線が、怖い。

 私が、ちゃんと役割を全う出来なかったから、怒っている。


「……確認は出来ていませんが、もしかしたら鍵を持っていたのかもしれません。そ、それと、お酒の匂いもしました! こちらも確認は出来ていませんが、〇〇王国の――というお酒の匂いがしました。もしかしたら……っ!?」


 私の報告は、顎を掴まれ止められてしまった。団長様と視線がぶつかる。途切れてしまった報告を続けようにも、ぎらつく瞳に、怖気づいてしまう。

 団長様は、怒ってる。そう、感じた。


「酒の匂いを嗅げるくらい、近くに寄られたのか」

「ぇっ……?」

「あの男に、触れられたか」

「っ……」

「答えろ」


 鋭い言葉に、怯えてしまいそうになる。

 なら、何に対して、そう怒りを露わにしているのだろうか……?


「か、仮面と、腕には、触れられてしまいましたが、他は触れられていません……」


 いきなり、キスをされた。けれど、今までのものとは全く違う、それよりも乱暴なキスだ。獰猛な獣に、喰われてしまうという危機感を覚えた。

 ようやく離してもらえた時には、もう腰が砕けてしまっていた。それなのに、またキスを再開してくる。頭がくらくらしてきて、飲んでいないはずなのに軽く酔ってしまったような気分になる。


「降りるぞ」

「ぇ……?」


 気が付けば、馬車は止まっていた。団長様に抱き上げられ、そのまま馬車から降りた。辿り着いていた団長様の屋敷に入った。