ソファーに座っていた男性は、立ち上がり私の方に近づいてくる。それに合わせて私も下がった。
「そんなに嫌?」
「……」
けれど、気が付いた。部屋の外からする足音に。
この足音は一人、そして恐らくヒールじゃない。もしかして、団長様だろうか。もしそうだとしたら、今この休憩室の中で起きている予想外に気が付いてくれる。
「別に置いてかれたわけじゃないわ。私が疲れてしまったからここで休んでいただけよ。彼はお酒が好きだから私が会場に行かせたの。ただそれだけよ」
「ふぅん」
「だから、彼を悪く言うのはやめて」
「……彼っていうのは……」
そう言って、男性は扉に向かって指を差した。コンコンコンコンッと4回ノックをする音が聞こえてくる。団長様だ。
けれど、ガチャガチャと金属音が聞こえてくる。もしかけて開けられないでいる? という事は、この男性がここに入ってきた時、鍵をかけた……?
早く開けなくては。そう思ってドアの方に向かおうとするけれど、腕を掴まれた。睨みつけても、にっこりと視線を向けてきて。けれどこうしちゃいられない。すぐに私は腕を回して男性の腕を外し、扉の方に急いだ。そして、鍵をすぐに開ける。
迷わず、目の前にいた団長様の腕に抱き着いた。そして、男性を睨みつけた。
「……悪い、遅くなったな」
早く行こうか、とその部屋を後にしたのだ。
ちらり、と男性の方を見た時に口角が上がっていた事に気が付いたが無視した。それよりも……
「何があったのかはあとで聞く。帰ろう」
「は、はい……」
団長様に言われたことをちゃんと出来なかった。それが、一番悔しく思ってしまう。
潜入した際に通った道とは別のルートで、会場は通らずすぐに玄関に向かった。そして屋敷を出て待機していた馬車に乗り込んだ。
「あの、任務は……」
「あぁ、無事完了したから安心してくれ。後処理は他の団員達が行うから、私達はこのまま屋敷に戻ろう」
と、いう事は追っていたあの商人は無事捕まったという事。それはよかった。さすが、近衛騎士団だ。私達より、断然優秀な人達だ。



