騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 大きな門をくぐれば広く手入れされた綺麗な庭に迎えられ、その先にある噴水を避けるように回ればお屋敷の玄関に辿り着いた。


「おはよう、テレシア」


 馬車を降りようというところで、まさか近衛騎士団長に手を貸していただけるとは思わず一瞬ためらってしまった。けれど、この後の任務も馬車での移動となるので練習させていただこうと手を乗せた。

 けれど、テレシアと呼ばれてしまうのは困る。未婚の女性の名前を呼んでしまうのはいかがなものか。でも、本人は微笑みながらそう呼んでくるから私からは何も言えない。周りの使用人達もにこやかにこちらを見てくるから調子が狂うな。


「あの、近衛騎士団員の方から団長の執務室に向かうよう指示があったのですが……」

「あぁ、このまま連れてきてしまった方が効率がいいと思ったんだ。説明なく連れてきてしまって悪かったな」

「……いえ、問題ございません」

「本当なら私が直接起こしに行きたかったのだが、時間がなくてな。だが朝からテレシアに会えて嬉しいよ」


 以前ブティックにお邪魔した時の事を思い出し、団長様じゃなくてあのメイドさんが来てくれたことに感謝した。朝から心臓に悪い事はやめてほしい。

 初めて近衛騎士団の任務に参加させていただくから緊張で心臓が口から飛び出るんじゃないかと思っていたから、本当に助かった。

 けれど、そんなに微笑んでこんな事を言われたら……本当に勘違いしてしまう。

 ……そう、任務。これから任務だ。そう自分に言い聞かせて団長様と共に屋敷に入った。任務の詳細を聞けるのかと思っていたのに……


「遠慮なくやってくれていい」

「かしこまりました、侯爵様!」


 出てきたメイド達の言いなりとなって広いお風呂に入れられてしまった。団長様はこのまま王城に行くらしく、時間になれば迎えに来るとのこと。いろいろとお聞きしたいことがあったのに、メイド達によって浴室に引きずりこまれてしまった。