騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 最近、こんな事ばかりだ。

 私が酔っぱらって近衛騎士団長様を自分の部屋に引き連れ襲い、何でもするから黙っていてほしいとお願いした。それからずっと遊ばれているのだと思っていたのに……

 そう思わせないとでも言いたげに、優しく私の名を何度も呼ぶ。ただの女性騎士だというのに、可愛らしいと、まるで令嬢のように接してくる。

 長年騎士の道を歩んできた私にとってはよく理解出来なかったけれど、気が付けば心が揺れ動いて、自分ではもう制御しきれないところまで来てしまっている。

 これでは、恋する乙女そのものだ。


「テレシア、そんなに可愛い寝顔を見せたら襲ってくれと言っているのと一緒だぞ?」


 そんな囁きで、一瞬にして意識が浮上した。

 ベッドから無意識に勢いよく起き上がると、目の前に近衛騎士団長様がいらっしゃった。


「ぅわっ!?」

「おっと」


 驚愕し身を離すように後ろに手をつくと、一気に上半身が後ろに傾いた。後ろにつこうとした手がベッドに触れていなかった事に気が付いたけれど……ベッドからは落ちる事はなかった。

 誰かに、抱えられてしまった。……いや、近衛騎士団長に。

 ……近衛騎士団長様が私の部屋にいらっしゃることは、寝ぼけた私でもよく分かった。やっぱり、団長様はウチのスペアキーをお持ちなのだろうか。


「朝から元気で可愛らしいな、テレシア。おはよう」

「……おはようございます、団長様」

「団長様?」

「……リアム」


 一瞬にして、眠気が吹っ飛んだ。流石です、泣く子も黙る悪魔の近衛騎士団長様。

 この顔の整ったお顔でのその微笑は、寝起きの私には眩しすぎるけれど言わないでおこう。何となく、後悔しそうだから。


「朝からテレシアの可愛い寝顔を見られるのは嬉しいものだな」


 ……いつぞやのここで起きた事件の記憶が蘇る前に、私はまず顔を洗ってこよう。何故団長様がここにいらっしゃるのか聞くのはその後だ。


「……あの、洗面所に行かせていただいてもよろしいでしょうか」

「あぁ、行っておいで」


 けれど何故、彼は近衛騎士団の制服ではなく私服なのだろう紳士服なのか。

 いやな予感がするのは、私の勘違いだろうか。