騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 それにしても、副団長に聞かれるとは思わなかった。確か、寮母はシンプルだけど見る人が見ればこれは高級品だと分かると言っていた。副団長は伯爵家の嫡男。そのご夫人が聞いてこいと言ってきたという事は、上位貴族のご夫人ならあのドレスがどういうものなのかが理解出来るという事。

 という事は、他の夫人も見ていたという事になる。

 男爵家の令嬢で、社交界に全く顔を出さない私がこんなドレスを着ていた。誰だって不思議に思うだろう。

 第三騎士団員にも貴族の子息達が多い。だから他にも聞かれるかもしれないけれど、ちゃんと言い訳を考えておいた方がいいかもしれない。

 そんな事を思いつつ、美味しい骨付き肉を堪能した。

 色々と面倒な話に耳を傾けつつも、しっかりとデザートまで頼んだ。奢ってもらえるのだから遠慮なく食べるに限る。


「うわ、副団長それ食うんですか。いつも思うけど見た目とギャップありすぎっすよ」

「テレシアの方が食ってるけどな」

「先輩達の労いですから、ありがたみはちゃんと感じてますよ」


 確かに、副団長は身長高めで細身だけど筋肉ムキムキではあるからスイーツは似合わないかもしれない。

 まぁ、どうせ副団長は私が交流会で食べたケーキを羨ましいと思ってのそのケーキなんだろうけれど。

 それに代わって私は苺のケーキに、チーズケーキに、ガトーショコラだ。狩猟大会ではいろいろとハプニングはあったけれど私は頑張った方だと思う。なら、自分へのご褒美はちゃんと与えなくては。


「本当に先輩達は甘いもの苦手ですよね。こんなに美味しいのにもったいない。甘いもの食べれば疲れ取れますよ?」

「うるせぇ。肉で十分だろ」


 さすが脳筋。ケーキ美味しいのに、もったいないな。

 でも、前にケーキを食べていて「お前、そういうところ女子だよな」と言われた事がある。とはいえ、普通のご令嬢より食べるところは可愛くないと思う。つくづく女子からかけ離れたご令嬢だと自覚はしているけれど別に気にしない。

 お会計の額は見せてもらえなかったけれど、きっと相当な額になった気がする。ちょっと食べすぎたな。けれど、ありがとうございます、ごちそうさまでした。明日からも先輩達に置いていかれないように精進しよう。

 男子寮の先輩達と別れて女子寮のある方へ。仕事終わりに食事に連れていってもらったから、もう辺りは真っ暗。けれど王城は明るいので夜道には困らない。

 今回の狩猟大会では色々な事があった。そして一番は今回私が陛下とお話をした事が大きかった。その事を貴族達が目撃してどう思ったのかは分からない。けれど、私は第三騎士団団員。王城騎士団所属なのだから、下手に手は出せない。だから自分で気を付けていればいいだけの事だ。

 美味しかった食事を思い出しつつも、とってもいい気分で女子寮に戻った。