騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 今朝、大きな声も出しちゃったし、ベッドからも落ちて大きな音も出していた。例え寝ていたとしても、あれはさすがに起きる。あんな大きな音に気が付かない騎士(・・)がいるわけがないのだから。


「それと、腰は大丈夫か?」


 これは、正解?

 血の気が引いたけれど、必死になってコクコクと小さく何度も頷いた。


「鍛錬に響くのではと心配していたんだ。それならよかった。あぁ、今君の部屋の窓が開いてるんだ。流石に女子寮の玄関から堂々と出るのはまずかったのでね。だから後で戸締りをしてくれ」

「か、しこ、まりました……」

「あぁ」


 まごう事なく、私の部屋にいた人物である。でも、まさか、この方って……いやいやいや、まっさかぁ……

 視界に入る、彼の着ている袖。めくられている部分は黒い生地で、腕の部分は白。そして、金色の刺繍が施されている。これはまさしく、近衛騎士団の制服だ。

 そして、袖に付いているこの金色のカフスボタンを見て、寒気を感じた。これは、うちの団長にも付いている。騎士団のトップたる団長様が付けるもの。

 この方は、まさしく……近衛騎士団長。

 これは……ヤバい。非常にヤバい。この状況を打開するにはどうしたら……そう思っていたのに、首に何かふにっと柔らかい感触を感じた。そこは、確かさっき先輩に見つかり虫刺されと誤魔化した部分。ま、さか……


「今夜もそちらに行ってもいいか」

「……」


 こ、今夜も……今夜も、この人来ちゃうの……!? わ、私の部屋に……!?

 近衛騎士団長が、私の部屋に来る。しかも、また、である。これは現実だろうか。まだ私が寝ているのかもしれな……いや、今朝の鍛錬でだいぶしごかれて、朝のベッドからの転落時に受けた衝撃でもう目はぱっちりである。頭もちゃんと起きているはずだ。


「楽しみにしてる」


 と、次はリップ音を鳴らしつつ頬にキスをされ、私の背後から離れていった。

 気が抜けたからか、足の力が抜けてゆっくりとしゃがみ込んでしまった。


「……」


 ……はは、笑えない。

 私、殺される? 殺されるのか?

 とりあえず……早く部屋に行って鍵閉めてこよう、うん、そうしよう。