騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 誰か来てる、早く隠れなくちゃ。

 潤んだ目で騎士団長様に訴えると、大人しくなってくれるけれど口は離してくれない。ど、どうしよう……

 心臓の音が、どんどん大きくなって心拍数が上がっていく。見つかったらどうしよう。近衛騎士団長様と、ただの騎士団員がこんなところで、だなんて……恐ろしくてその先を考えたくない。

 話し声も大きくなり、そして、ガチャ、とこのドアの音が聞こえてきた。

 ……――終わった。

 そう思っていた時だった。


「あら?」

「どうしたの?」

「鍵がかかってるのかしら? 開かないわ。休憩室は、ここで合ってますよね?」


 か、鍵……? 鍵、かかってたの……?

 鍵がかかっている事に安堵してしまったけれど……目の前の騎士団長様の視線が、痛い。そむけると、口内に侵入している舌が、私の弱い部分をツンツンと触れてくる。つい声を出しかけて、すんでのところで止めることが出来た。危ない……

 だって、私の後ろにあるドアを隔てた先には、女性が何人かいるんだもん……お、恐ろしい……


「なら、あちらの休憩室に行きましょうか」

「えぇ、そうしましょう」


 そして、ようやく去っていった事を足音で確認出来て安堵したが……忘れるなと言わんばかりに舌が暴れ始める。

 また来たらどうするんですか!! と訴えたかったところなのに、頭が真っ白になってしまった。ようやく離してもらえたと思うと、力が抜けその場にしゃがみこんでしまう。足に力が、入らない……

 目の前には、しゃがみこみ抱きしめてくる騎士団長様。


「本当は、早く君に会って、今日の頑張りを褒めてあげようと思っていた。だが……腹の虫が収まらなくてな」

「っ……?」


 は、腹の虫……? 一体どうして……と、思ったけれど、さっきの様子ではあの元婚約者が原因だろうか?

 もしかして、あいつのせいで、こんな事になってる、と? もしそうなら……顔面を殴るぐらいはした方が良かったなと後悔する。


「嫉妬で頭がおかしくなりそうだ」

「っ……」


 この近衛騎士団長様からの口から、嫉妬というワードが出てきた。あの悪魔の近衛騎士団長がそんなワードを出てくるなんてあり得ないと普通は思ってしまうけれど、目の前のこの方は……いつも私のところに来てくださって、私に微笑みかけてくれる方だ。

 本当にこの方は、近衛騎士団長様なのだろうかと思ってしまう。