騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 私の職場であるここ王城にはいくつもの建物がある。騎士団が主に使っているこちらの東棟から、今向かっている倉庫まではさして遠くはない。けれど、そこに辿り着くまでに階段などがあるから時間がかかる。

 とはいえ、騎士団で使用する武具の整理や手入れ、備品運びなどの仕事に比べればこんなもの苦ではない。

 さっさとこれを終わらせよう。そう思いつつ辿り着いた倉庫に入り明かりをつけた。部屋は事務室と同じような広さがあり、私の身長よりも高い棚がいくつも並んでいる。棚と棚の間に入り、正しい位置を探した。


「えーっと、これは……」


 けれど、私は気付かなかった。私の後に、誰かが倉庫に入ってきていたことを。

 知らず知らずに、私の背後に並んでいた人物が、私の頭の横から手を伸ばし、目の前の棚に手を付けた。それに気が付き、体が硬直した。

 全く、気が付かなかった。私は一応騎士の端くれだけど、人の気配は一般人よりは感じ取れる。それなのに……気付かなかった。なら、後ろに立つ人物は、一体誰だ。


「朝の鍛錬には間に合ったか?」


 低めのトーンの、それでいてとても綺麗な、何となく聞き覚えのある声が、腕側とは逆の耳元でそう囁いた。

 朝の鍛錬。ギリギリだった事を知っていて、間に合ったかどうかの結果を知らない人物。


「間に合い、ました……」

「そうか、それは良かった。私のせいでお叱りを受けてしまうのは心苦しかったのでね」


 まさか……今朝の、私のベッドにいた方なのでは……?