「ウチの息子は第二騎士団の副団長を務めているの。あなたと同じ王城騎士団ね。会った事はあるかしら」
「……勤務中に、何度かご挨拶をさせていただきました」
「そう! うちの息子は剣ばかりで色恋に中々目を向けない子でねぇ。もう少し女の子と触れ合った方がいいと思っているの。テレシアさんは息子と共通点もあるし、職場も一緒だし、歳もさほど離れていないわ。だから、顔を合わせた時にはお話してあげてちょうだい?」
「……かしこまりました」
彼女は一体、何を思ってそう提案しているのだろうか。私はご令嬢であっても底辺の男爵令嬢で、騎士をしている。そんな私に、第二騎士団の副団長とお近づきにでもさせるつもりなのだろうか。
恐らくこれは陛下とお話した事が原因だ。マダムが私が着ていたドレスに気が付いたのかは分からないけれど、陛下との会話が聞こえなかったとしてもあんな柔らかい表情で話をなさっていた事に驚いた事だろう。
そして、その話し相手であった私を利用出来るのではとでも思ったか?
これだから嫌なんだ。社交界というものが。呆れてものも言えない。
「そんなに硬くならなくていいのよ。確か、王城騎士団には専用の食堂があるのよね? なら、まずは一緒に食事を……」
「母上」
そう言葉を止めた第二騎士団副団長は、彼女ににこやかな表情を見せた。
お父上が待っているから行ってあげてください、と彼女をこの場から離したかと思えば……
「はぁ……」
そんなため息を吐いていた。そして、私を睨みつける。
それもそうだ、第三騎士団と第二騎士団の仲の悪さは最悪なのだから。
「俺は騎士団の名を汚す奴が大嫌いだ。お前のようなままごとをして調子に乗る女と慣れ合うつもりは全くない。あれは母上が勝手に言った事。今回の事は聞かなかった、いいな?」
「……かしこまりました」
第二騎士団は女性騎士団員を毛嫌いしている団員が多い。けれどそこまで言うか。相手は副団長な上身分も上だから従ったけれど、少々腹が立ったのは嘘じゃない。
私が今している事はただのおままごと。そして私は、この騎士団の名を汚している。
それをはっきり言われると、少し心が痛むところもあるけれど……志を持って仕事をしている事は確かだ。
けれど、副団長は顔をこわばらせた。彼の視線は、私が腰に提げている剣。



