「……で、それは?」
「……近衛騎士団長からお借りしたものです」
当然、副団長も私の腰にある剣に目がいく。見た目が洗礼された繊細な模様の剣だし、いつも近衛騎士団長が腰に下げているのだから副団長だって見ているはずだ。
……すぐに返すべきだと思って持ってきたけれど、これはさすがにアウトだっただろうか。私のを外側にして隠しているつもりだったんだけど。
「やべぇな、お前。借りるとか度胸あるな」
「飛んできたんです。その動物から一番近かったのが私だったので」
「まぁ、さすがにドレスに剣はないわな。でも俺、ケーキ用ナイフで仕留めたって聞いたんだけど?」
つい数時間前の事なのに何故知っているんだ。報告はされているだろうけれど私がケーキ用ナイフで仕留めたという件に関しては一体誰が言ったんだ。
「まぁ、それしかなかったんで」
「……マジだったんだ。やるなお前」
この口ぶりだと、副団長はこの話を聞いても信じてなかったという事になる。まぁ、国王陛下には無茶だと言われたし。無茶は父親と似てるらしいし。
けれど、これは誇る事じゃなくて怒られる事では?
これだと……明日にでも先輩達にからかわれるだろうな。このネタで。恐ろしい……
まぁでも、先輩達が賭けたお金でご飯食べに連れてってくれるんだからいっか。いっぱい食べよう。で、青って予測した人いるのかな? 確かガストン先輩は緑色だったっけ?
「で、陛下にお声がけされたんだって? 何喋ったんだよ」
「……副団長、交流会で出たケーキ、すっごく美味しかったですよ」
「……は?」
陛下との会話を話すのはいろいろと面倒だからあまり喋りたくない。両親の事ばかりだったから、そういう話はあまりしないでほしい。父と比べられるのはあまり好きじゃないから。
「生クリームたっぷりの甘酸っぱいチェリーケーキ、最高でした。じゃあ、見回り行ってきます」
「ちょっと待てテレシア!」
逃げるが勝ち。……の、はずだった。



