騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 首都でタウンハウスを所持する貴族は、大体が上位貴族や下位貴族の裕福な家のみ。首都にいる他の貴族は、私のように寮に入ったりと就職先に住んでいる人達ばかりだ。

 そして、王城で働く使用人達は貴族の者達が多いため、国が主催するイベントに参加する事もある。そのため、王城では寮母が手伝いをしてくれる事もあり、乗り合いの貸し馬車もある。


「あらまぁ、とても素敵なドレスねぇ」

「……貰いものです」

「それにしてはサイズがぴったりね。とても仲が良い素敵な殿方に贈ってもらえたのね。テレシアちゃんのそんな噂聞かなかったけれど、隅に置けないわね?」


 サイズがぴったり、という言葉に一瞬肩が上がりそうになった。顔の温度は上昇してしまったけれど、着替えを手伝ってくれる寮母は後ろにいるため見つかっていないはず。

 その貰った相手が女性ではなく男性だと決めつけているのは何故なのか聞きたいところではあるけれど、正解なのだから下手な事は言えない。


「……そういうのじゃないです」

「そう? でもこの靴、靴底に有名なブティックのロゴが入ってるわよ? ドレスにだってほら、同じロゴだわ。上位貴族の方かしら? 今は殿方がご令嬢にドレスをプレゼントする事が増えてきてるって聞いたけれど?」


 ふふふ、と笑い声が聞こえてくるが、そこまでして私の恋愛事情が気になるのか。そんなもの、期待したところで何も出てこない。むしろ、私の場合殿方との結婚よりクビになってこの寮から退去する可能性の方が高い。

 青色で、Aラインと言うらしい形の、シンプルではありつつも見る人が見れば高級品だと分かるドレスらしい。ドレスに疎い私にはよく分からないな。


「テレシアちゃんの事を思ってこのドレス達を用意してくれたのね。とっても気配りの出来る方だわ」

「どう、でしょうね……」


 これがリボンに宝石にレースにと色々な装飾が施された豪華なドレスだったら、きっと周りから批判を受ける事だろう。男爵令嬢のくせにこんな豪華なドレスを着るなんて生意気だわ、と。だから、その点は助かった。