「一日遅れての到着で一日早いお帰りだなんてさぁ~、やっぱり王族って大変だよな~」
「……」
この返答には困るな。この遅刻と急なお呼び出しの理由が何となく分かってしまった私は、一体どう返したらいいのだろうか。極秘任務の事も関わってくるだろうし。
「王族って言えば、第三王女殿下の大変だよな。だって近衛騎士団長との婚約だぜ? 絶対に……」
「テレシア」
そんな時だった。ガストン先輩が言い切る前に、左側からそんな私を呼ぶ声がした。それと同時に、私の左肩に何かが置かれる。ガストン先輩は右側に並んで立っていたから、二人声を合わせて「え?」と左側を振り向くと、血の気が引いた。
何故、こんなところに満面の笑みを向ける近衛騎士団長様がいらっしゃるのだろうか。しかも、ガストン先輩の目の前で、しっかりと「テレシア」と呼んだ。いつもと全く違う表情に、きっと先輩は目の前で一体何が起こっているのか混乱している事だろう。
かくいう私も、今のこの状況をどう乗り切ったほうが一番いいのか考えている最中ではあるけれど、その糸口が全く見つからず焦ってしまう。
「テレシア、迎えに来たよ。行こうか」
そう言いつつ私の手を取った団長様。私はこの手を離した方がいいのだろうか。いや、昨日のお仕置きを思い出せば、離してしまったらあとが怖い事は分かりきっている。
「あ、の、私、警備が……」
「君に任せよう。いいか?」
「しょっ承知しましたっ!!」
隣で青ざめるガストン先輩は、さも恐ろしいものでも見たかのように返事をした。いや、返事ではなく助けてほしい。……とは思ったけれどこの団長様に勝てる事なんて奇跡でも起きなければ無理だ。
じゃあ行こうか、と手をしっかりと握られ引かれてしまった。
ちらり、とガストン先輩を見れば口をポカーンとして私達を見つめていた。あぁ、これは帰った後に質問攻めだな。帰った時にはもう第三騎士団員達のほぼ全員の耳に入っているんだろうなぁ……
戻るまでに、言い訳か何かを考えておいた方が身のためだな……はは。
歩き始める団長様の手を引っ張り足を止める。振り返る団長様は、とてもにこやかだ。私が何度も見たことのある表情。けれど、きっとガストン先輩達は見たことがないかもしれない。
「あ、あの、一体どこに……」
「……想う女性には誠意を見せてこそ信頼してもらえる男性になれると私は思うんだ。なら、テレシアにはしっかりと誠意を見せよう」
こんなところで誠意を見せるだなんて一体何をするつもりなのか、逆に恐ろしくなってしまった。



