デガルド団長から、唯一褒められたもの。それは、足の速さ。障害物がなければぶっちぎりで先輩達に勝てるほど。昔から足は速かったけれど、王城騎士団に入団してより一層速くなった。
木々の間から差す光で中は明るい。見つけると、木に登り木伝いに飛び移りすぐに距離を縮めた。ここは木が多いから下を走るには障害物が多い。そして、犯人の前に飛び降り剣を抜く。相手は後ずさると脇に差していたらしい剣を抜いた。
黒いマスクに小さなフードを被る犯人は、まるで暗殺ギルドのような黒い格好。背丈的に男性だ。けれど、先ほど追っている時に聞いた足音から、焦っているような気もする。追いつくとは思っていなかったのか。
そして、切りかかってくる。それを剣で受けるけれど、相手はだいぶ力が強い。だから受け流せばいいだけなんだけど……何となく、違和感がある。それはきっと、この人の太刀筋がとても綺麗だからだと思う。
洗礼された、とても綺麗な太刀筋。まるで、長年騎士として経験を積んだ方のように見える。ガストン先輩のような力の強い男性と違って、まるで副団長と剣を交えているような気分だ。長年王城騎士団として勤め上げた方のよう。
けれど、おかしい。この剣捌き、何となく知っているような……どこかで、受けたことがあるような……ほら、ここで……――右。
「っ!?」
やっぱりそうだ。どこだ、どこでこれを覚えたんだっけ……
記憶を引っ張り出し探しつつも受け続け……ようやく背中を取った。そして、手刀を入れ気絶させると懐から金属の手錠を取り出し嵌めた。
どこ、だったかなぁ……どこかで、これを受けたはず……王城騎士の時? 地方騎士の時? それとも……と思い出しつつも寝そべる彼の顔を覗いた。マスクを外したが、見覚えのない顔だ。けれど……これは、日焼け?
我が国の首都は日差しが強い。けれどこの日焼け……この日焼けの痕は何かに似てる……というところだった。複数の足音がし、それがすぐに第一騎士団のものだと確認が取れた。
「何だ、お前でも捕らえられる雑魚だったか」
「……」
「じゃ、こちらで引き取る。お前はそのまま持ち場に戻れ」
聞き捨てならない一言はあったけれど……あっ、と思い出した。
それは、私が地方騎士団に入団した頃。確か、休暇をいただき実家に顔を見せに帰った時、ちょうどお父様の友人である男性が遊びに来ていた。剣を扱う方で、一度手合わせをしていただいたことがあった。それだ。その男性と似てたんだ。
その男性は、この国ではなく隣国の方だったらしい。……ちょうど今、ご来訪なさっている国の。
それを思えば、先ほど捕まえた方の顔の日焼け。第三王女と第二王子の護衛として共に来訪なさった騎士団の方が武装していらっしゃる鎧。あのヘルメットを思い出せ。日焼けしていない部分に、ちょうどよく嵌るのでは……?
……さて、これはご報告した方がいいのだろうか。



