「どう、でしょうね……ですが、今は剣に向き合う事を決めています。尊敬する方々や、目指す目標もありますから。いずれは令嬢として政略結婚をするでしょうが、それまでは、騎士として精進していこうと思っております」
「そう……強いのね。騎士としての志がある事は、とてもかっこいい事だと思うわ。でも、あなたは女性でしょ? 22歳となると、私の国では少し遅いかしら? この国ではどうなのか分からないけれど、結婚したら剣を手放す事になるだろうし……」
あぁ、この方も同じだ。
女性騎士をあんなに褒めてくださったのに。それでも、結局は女性なのだからと当然のように話してくる。
今までだったら、ただ聞き流すだけで済んだ。それなのに……恐らく、褒められ慣れていなかったから、なんだと思う。
……何期待してるんだろう、私は。そう自分に呆れつつも愛想笑いをしていたその時だった。
「あっ……リアム様っ!」
殿下が、ふと右側を向いた時。私もつられて視線を向け、彼の姿を見てしまった。そして、目が合う。
その瞬間、無意識に視線を外し前を向けば、殿下がもう立ちあがり団長様の方へ駆け寄っていったところが見えた。
無意識に、私も席を立ち、数歩下がった。ここにいては駄目だ。そう思うと、ここから走り去ってしまいそうになる。
けれど、その時だった。
心地良く流れる風を、勢いよく裂く音が、した。
そして、金属同士がぶつかるような、そんな音が響く。
その先を向くと、殿下と、剣を抜いていた団長様、そして下に落ちる長い棒のようなもの。
団長様の視線の先は、この後宮を囲む林。それに目を向け、そして私は走り出した。
暗殺だ。それも、第三王女を狙った、暗殺。団長様が、第三王女に飛んできた矢を剣で防いだところだ。
一体何故? いや、王族は常に狙われるもの。王太子しかいらっしゃらないこの国と違って、隣国は王子に王女が何人もいらっしゃるから、自然と王位継承権争いも起きる。
なら、この王城に潜入した暗殺者がいる? この王城の、後宮に入り込めるだなんて、余程の手練れだ。
陽の光で、何かが光る。その場所に、きっと殿下に向けて矢を放った犯人がいる。林の中に入ると、私に気が付いたのかもうその場所にはおらず、けれど足音が聞こえてくる。……いたっ。



