「あ、京。ここっ!」
綾が手を挙げ、俺に居場所を示す。
やっぱりここか……。思った通りの場所に綾は立ち止まっていた。何の変哲もない、ただの森の中。
「何しちょるけん」
「んー……分かんない。なんか気になったんだけど、何もないね」
「………」
気になった? この、場所が?
「うぅ〜ん……。分かんないや。ゴメンね、行こっか!」
綾は笑顔を見せて、木々をかき分けて道端に出た。
その後を、黙ってついて行く。
「でもよく場所分かったね」
「……昔よく遊んでた場所だけん」
「あっ、そうなの!? あたしも?」
「何回かは」
「体が覚えてたのかなぁ……。ん? 心って言ったほうが正しいのかな……」
「う〜ん」と唸る綾を見ながらも、俺はあの場所に意識が飛んでいた。
……あの場所は、ふたりの秘密の場所。
ふたり手を繋いで、蛍を見た。雪が降りしきる夜、綾が俺を抱き締めてくれた場所だよ。
……そう言えたら、どれだけ幸せだろう。
でも嬉しいんだ。記憶になくても、心が覚えていてくれたこと。
それほど幸せなことも、ないよ。



