言葉通り、ジンが近隣から調達してきた『紫陽花』を元に、さっそく瞳子と二人がかりで斜面に挿し木をする。
足場の悪さから瞳子には先にジンと屋敷に戻ってもらうことも提案したが、
「私が言いだしっぺなのに、やらずに帰るなんてあり得ないでしょ!」
と、突っぱねられたのだ。
(本当に、瞳子には敵わないな)
瞳子のまっすぐな責任感は、当主として人の上に立っていた『虎太郎』時代の苦悩を思うと、何者にも代え難い。
共に、この国──“上総ノ国”を背負って行きたいという彼女の心の表れに思えるからだ。
(『愛でるだけの“花嫁”』と揶揄されてきた歴代の赤い“花嫁”たちとは違うのだろうな)
そんなことを思いながら、斜面のほとんどに挿し木を済ませる頃には、陽もだいぶ落ちてきていた。
「瞳子、そろそろ終わりにしようか」
「そうね。このくらいで──」
双真の呼びかけに振り向いた瞳子が言いかけた、その時。ズルッ……と、瞳子の身が、斜面の反対側へと傾いだ。
「瞳子ッ」
『──ご無礼を』
とっさに自ら受け止めようと、瞳子の元に跳躍しかけた双真の前で、短い語を放ち、ジンが地中より現れた。そして、当然のごとく瞳子を抱き止める。
「……ありがとう、ジンさん」
『ジン、と。お呼びくだされ……かた様』
足場の悪さから瞳子には先にジンと屋敷に戻ってもらうことも提案したが、
「私が言いだしっぺなのに、やらずに帰るなんてあり得ないでしょ!」
と、突っぱねられたのだ。
(本当に、瞳子には敵わないな)
瞳子のまっすぐな責任感は、当主として人の上に立っていた『虎太郎』時代の苦悩を思うと、何者にも代え難い。
共に、この国──“上総ノ国”を背負って行きたいという彼女の心の表れに思えるからだ。
(『愛でるだけの“花嫁”』と揶揄されてきた歴代の赤い“花嫁”たちとは違うのだろうな)
そんなことを思いながら、斜面のほとんどに挿し木を済ませる頃には、陽もだいぶ落ちてきていた。
「瞳子、そろそろ終わりにしようか」
「そうね。このくらいで──」
双真の呼びかけに振り向いた瞳子が言いかけた、その時。ズルッ……と、瞳子の身が、斜面の反対側へと傾いだ。
「瞳子ッ」
『──ご無礼を』
とっさに自ら受け止めようと、瞳子の元に跳躍しかけた双真の前で、短い語を放ち、ジンが地中より現れた。そして、当然のごとく瞳子を抱き止める。
「……ありがとう、ジンさん」
『ジン、と。お呼びくだされ……かた様』



