神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

「そこまで気になるなら瞳子サマに訊いてみたらいいじゃないですか。クマとオオカミ、どっちが好きなんだって」
「そんなこと瞳子に訊けるか!」
「なら、そんな阿呆ヅラさげて悩んでないで、素直に瞳子サマに構って欲しいって言えばいいんですよ」
「は? なんだそれ?」
「だってそうでしょう。瞳子サマの気持ちなんて、いまさら確かめるまでもなく、貴方にしかないことは、とっくにご存じでしょうが。
瞳子サマが“陽ノ元”に戻って来てくれたこと、なんだと思ってるんですか」

双真は、言葉に詰まった。
まったく(もっ)て、イチの言う通りだからだ。

瞳子は生まれ育った『あの世界』と決別し、“陽ノ元”に──双真の側にいることを、選んでくれた。

(解っている。だからこそ余計に、こんな浅ましい嫉妬心を表にだすワケには──)

「とにかく、私はしばらく“現世(うつしよ)”にはいませんからね? お二人のことはお二人でなんとかしてくださいよ。
ま、ひとつ言わせてもらえばですね──」

言って、イチは双真の頭に手を伸ばしてきた。幼い頃の『虎太郎』の頭をなでた時のように、諭す言をこぼす。

「お前、少しは瞳子サマの好意に甘えておけ。……おれにするみたいにな」
「は? 瞳子の好意に甘えるだと?」