「…………馬鹿ですか?」
厭味たらしいほど長い溜息のあとに告げられた言葉に、主従の分別はない。
かろうじて敬う物言いなのが、逆に双真を貶めているのは間違いなかった。
ふたたびのわざとらしい大きな溜息をつくと、見目だけは麗しい名ばかり“眷属”が続けて言う。
「あまり、人にも物にも頓着しなかった貴方が、そこまでご自分の“花嫁”に対してご執心とは……幼き頃よりご成長を見守った身として、喜ばしいと思うべきですかね?」
「うるさいっ、厭味はもういい!」
双真とて、本当は解っている。これが、見当違いな思いなのだということも。
──刃を瞳子に引き合わせ、はや三日。
イチが為した名付けの儀式において、瞳子が短冊に書いたのは『ジン』だった。
「だって……名前知らないならまだしも、違う名前なんて思いつかないし……ダメ?」
と、困ったように上目遣いで己の“花嫁”に見られて、駄目だといえる“神獣”がこの“陽ノ元”にいるだろうか? いや、いないだろうと、双真は確信をもって言える。
「まぁ、私たちも呼びやすいから構いませんけど。瞳子サマ、名付けの感性欠落してますよね」
この猫呼ぶ時、しっかり『刃』でなく『ジン』と思い浮かべてくださいね? と、イチから釘を刺されていた瞳子である。



