神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

「だ、大丈夫。ちょっと驚いただけ」
「……そうか。刃は、オレの古なじみで妙子の兄貴だ」
「あ、妙子さんのお兄さんなんだ。それで、ちょっと見覚えがある感じがしたのかな?」
「……そうだな。
先ほどの村人らが熊と見間違えたのは、遠くからオレ達を見ていた刃の姿のようだ。
……まぁ、この身体だからな」

苦笑いで双真が言い添え、瞳子も疑う余地もなく納得した。

衝撃と動揺が過ぎ去り、瞳子は改めて双真から紹介された猫の獣人だという刃に対し、頭を下げた。

「ええと、瞳子です。刃さん、よろしくお願いします」
「……は。……武骨者であるゆえ、ひらにご容赦を」

瞳子の言葉に、ぎこちなく猫の頭が伏せられる。
チリン、と、鈴の音がして、見れば長い尻尾の先のほうに小さな鈴がついていた。

(……ヤダ、可愛い……!)

低い声でボソボソと話すところをみると、あまり対話が得意でないのかもしれない。
妙子は快活な印象だが、こちらはどちらかというと寡黙なようだ。

なぜか先ほどから視線が合わないのも、瞳子が嫌われてる……からではなく、朴訥(ぼくとつ)な性質なのだと思いたい。

(うん。少しずつでもいいから、話かけてみよう)

瞳子は、片ひざをついたままの新たな“眷属”を見ながら、そんなことを思っていた。