神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

正直、瞳子は動植物の生態に、そこまで詳しいほうではない。中途半端な知識で新たな生命を生み出すのは少し……いや、かなり怖い。

うろ覚えと言っていた通り、さすがのイチも、その部分に関しては即答できないようだった。
瞳子は、ひとまず“赤宝珠”を袱紗にしまいこむ。

(イチからの情報待ちってことか)

そう思い、はたと気づく。そういえば───。

「そもそも、この“赤宝珠”って、どうして私の手の中に現れたのかな? これって……また出現する可能性はあるの?」
「……まぁ、貴方がセキ様の“花嫁”であるうちは、際限なく得られると思いますよ。
ですよね、セキ様?」

にっこりと笑ってみせるイチと、急に咳き込みだした双真に、ひとり、蚊帳の外状態となる瞳子であった。



(もうっ……。真名(なまえ)を伝える『試練』といい今回の“赤宝珠”の件といい───)

赤い“花嫁”の“神力”にまつわるものは、なぜ情交が絡むのだろう?

(いい歳して気づかないとか、私がカマトトみたいじゃんか!)

あとになってイチの話を理解した瞳子は、視察のための着替えのさなか、恥ずかしさでいっぱいとなる。

イチにすれば、直接表現をはばかってのことかもしれないが───おかげで瞳子は、すぐに因果関係に気づけなかった。