けれども。
保平の助言を受け帰ってきた屋敷に、瞳子はいなかった。すぐに“眷属”を使い探しに行かせたものの、梨の礫。
保平がようやく瞳子の居所を突き止め、“大神社”の会談に臨めば、信じられない暴言を吐く保平と、たった数日で、ただならぬ関係性を築き上げているような、二人。
「どうしてあなたが僕でなく、あの人を見つめているのか……僕は本気で理解に苦しんだ。
あなたは僕のために……僕だけのために、この世界に喚ばれた“花嫁”なのに……!」
ひざ上でぐっと両拳をにぎりしめ、血を吐くようにして白狼が嘆く。
あの日、告げられた言葉の意味が、今日は違う響きとなって瞳子の胸に届いた。
(私は……白狼が樋村だったから、喚ばれたんだ……)
「あの、バレッタ。僕があなたにプレゼントした物ですよね? 安物だったけど、あなたは気に入ってくれていた。
……あの晩、あなたの髪を留めたバレッタを見た時、僕がどれだけ嬉しかったか……分かりますか?」
白狼の言葉が、瞳子の胸をえぐった。
それは、彼───樋村の死を、橘から聞かされた時と、まったく同じ罪悪感だった。
あまりの居心地の悪さに、いますぐこの場から逃げだしたくなる思いに囚われる。
保平の助言を受け帰ってきた屋敷に、瞳子はいなかった。すぐに“眷属”を使い探しに行かせたものの、梨の礫。
保平がようやく瞳子の居所を突き止め、“大神社”の会談に臨めば、信じられない暴言を吐く保平と、たった数日で、ただならぬ関係性を築き上げているような、二人。
「どうしてあなたが僕でなく、あの人を見つめているのか……僕は本気で理解に苦しんだ。
あなたは僕のために……僕だけのために、この世界に喚ばれた“花嫁”なのに……!」
ひざ上でぐっと両拳をにぎりしめ、血を吐くようにして白狼が嘆く。
あの日、告げられた言葉の意味が、今日は違う響きとなって瞳子の胸に届いた。
(私は……白狼が樋村だったから、喚ばれたんだ……)
「あの、バレッタ。僕があなたにプレゼントした物ですよね? 安物だったけど、あなたは気に入ってくれていた。
……あの晩、あなたの髪を留めたバレッタを見た時、僕がどれだけ嬉しかったか……分かりますか?」
白狼の言葉が、瞳子の胸をえぐった。
それは、彼───樋村の死を、橘から聞かされた時と、まったく同じ罪悪感だった。
あまりの居心地の悪さに、いますぐこの場から逃げだしたくなる思いに囚われる。


