神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

イチの声と共に、双真の背を覆ったのは、自らの緋色の直垂(ひたたれ)。次いで、バサバサと袴や内着なども側に落ちてくる。
最後に、そっと置かれたのは、ヘビ神に預けたままであった“神逐(かむや)らいの(つるぎ)”。

双真は人の姿になりながら、衣にそでを通した。

「イチ、瞳子は───」
「おそらく、白狼様の屋敷かと」

先程までの双真の推測とイチの結論は同じだったようだ。
いつになく真剣な眼差しを向けてくるイチの顔が、渋面となる。己の手落ちを悔いるように。

「“結界”のほころびと、こちらの護りが手薄になる機会をうかがっていたものかと思われます」
「……そうか。だが、()に落ちないこともある」
「ええ。白狼様お一人の考えや力ではできないことでしょう」
「あの日、二人は決裂したかのようにも見えたが……貝塚(かいづか)保平(やすひら)か」

会談での瞳子への暴言に、白狼自身、かなり憤っているようではあったが。なんらかの利害の一致があったのだろうか?

「貝塚にとって、瞳子は不用な存在だろう。白狼に新たな“花嫁”を“召喚”するほうが、奴にとっても都合が良いと思うがな」
「……言いたくはないですが、あるのでしょう、貝塚にとって瞳子サマを奪い去るだけの利点が」