「お、おはよう、遠野くん」
「……塁。塁って呼んで」
「え、あ、うん、塁くん……っ」
すこしすねたような顔をされて、わたしはすぐに言い換えた。
そういえば始業式の日も、名前で呼んでって言われてたっけ……。
塁くんは満足げに笑うと、手を差し出して車のドアを開ける。
「おいで」
「う、うん……!」
こんな車、はじめて乗るなぁ……。
わたしはどぎまぎしながら塁くんの手をつかんで、車に乗せてもらった。
こんなにながくて、なかにはたくさん席があるのかなって思ったんだけど……。
車のなかには、横にながーいソファーがあったんだ。
「わぁ……」
「……めずらしい?」
「うんっ。こんな車、はじめて見た……!」



