『ほら、つかまっていいぞ』
わたしはその手をつかんで、いちばん上に登った。
ジャングルジムから手を離して立ち上がろうとすると、体がぐらつく。
でも、おなかに男の子の腕が回って、バランスを取り直すことができたんだ。
わたしを支えてくれる体がたのもしくて、そのときにはすでに、お兄ちゃんみたいだなって思ってた。
……ううん、ちょっとうそ。
そのときはまだお兄ちゃんとかよくわからなかったから、最初はお父さんみたいだなって思ってたんだ。
『たかいだろ、ここ』
『わぁ……! いつもとちがーう!』
ジャングルジムのてっぺんから見る幼稚園は、わたしが知ってる幼稚園とはちょっとちがった。
前のめりになって景色を見ようとすると、『あぶないだろ』と男の子に抱き寄せられて、体の位置がもどった。
わたしは楽しくて、にっこり笑いながら、男の子のほうにふり向いたんだ。



