『ん、しょ……』
『わぁ……!』
幼稚園のジャングルジムの前で、わたしは目をキラキラさせていた。
そこには、ジャングルジムのいちばん上まですいすい登って、両手を広げながら立つ男の子がいたから。
『すごーい!』
『ん? おまえもくるか?』
男の子はにかっと笑って、手を差し出した。
高いところにいたからその手はとどかなかったけど、わたしはおおきくうなずいてジャングルジムに近寄る。
『うん! でも、“おまえ”じゃなくて、このは! わたし、このはだよ』
『ふーん? ここまでのぼってこれるか、このは?』
『のぼれるもん!』
ジャングルジムのてっぺんでしゃがみこむ男の子に見守られながら、わたしは時間をかけて上に登り、なんとかいちばん上のぼうをつかむことができた。
でも、そこに足をかけることができそうになくてこまっていたら、男の子が手を差しのべてくれて。



