「……あ、このちゃん」
開いたままのとびらから教室に入ると、つくえにあさく座っていた遠野くんと目が合った。
「遠野くん……」
おはよう、って言いづらくて、教室のゆかを見る。
かかとをこするようなかわいた足音がして、遠野くんがわたしの前に立ったのがわかった。
「……ごめん。なにか傷つけるようなこと、言っちゃった?」
「……ううん」
「このちゃんが泣いてた理由、知りたい。このちゃんは僕のとくべつな子だから」
とくべつ……。
それはラブメイトだから、ってことだよね。
ようすを見るように、遠野くんの顔を見ようとすると、うしろから「仔猫ちゃん?」という声が聞こえた。
「遊馬くん……」
「やっぱり、俺の仔猫ちゃんだ♪」



