ほおに手がふれて、顔の向きを変えられた。
真正面からわたしを見下ろすトラにぃは、いつになく熱っぽい目をして口をうごかす。
「好羽、好きだ」
「待って……!」
背中に回っていた腕が離れて、体がうしろにたおれた。
わたしを背後から抱きしめたのがだれなのかは、耳元で聞こえるフルートの音色のような声でわかる。
「好羽ちゃん、僕の天使さま。僕をえらんで……僕と付き合って欲しい。かならずしあわせにするよ」
ふるえるほどに強い思いがこめられている声が、左耳にそそぎこまれた。
「好羽さん、おれからもお願いします。優生くんと付き合ってあげてください……」
尽くんのそんな言葉が聞こえたころに、やっとわたしの頭は回りはじめた。
14歳になるまで、恋をしないこと。
そして――……。



