ぼそぼそとつぶやきながら、遠野くんは横目にわたしを見る。
眠そうな、半分まぶたが下りた目をしているけど、優生さんとはまたちがった意味で、遠野くんもととのった顔をしていた。
「……あ。……ねぇ、なんて呼べばいーい?」
じぃっと見つめられたまま話しかけられて、顔をそむけるタイミングをのがしちゃった!と反省する。
わたしはしかたなく、目をそらしながら答えた。
「えっと……し、白山で」
「それ、苗字? 名前は?」
「好羽、だけど……」
「好羽……好羽……この……」
ぶつぶつとつぶやく遠野くんにきんちょうしてたけど、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴って、ほっとする。
これでもう、話しかけられなくてすむ……!
がらがらと教室の前のとびらを開けて、先生も入ってきたし。



