「ありがとう、(あかね)

小さな声で告げた真名に、呼ばれた当人が目をみはる。
ぴたりと、その足が止まった。

「……あら。(しとね)の上以外で初めて聞いたわ。……新鮮な響き」

ささやきが艶めいて、美穂の唇に吐息まじりに落とされた。
触れた体温に応じながら、その合間に届いた言葉を、かろうじて耳が拾う。

「どういたしまして、美穂」

───ふたりの到着を待ちきれずに、招待されていた宴が始まったのは、その頃。





       ─── 終 ───