……こういう所だ。

なんでこの人は、相手の落ち度を責めずに感謝できるんだろう。絶対、いろいろと損をしてる。

年末年始の繁忙期あとも、一人でくるくる動き回って資材の補充に走ってたし。
接客が得意でないオレと組むのを嫌がるパートさん達の替わりに、よくシフトに入ってるし。

「あ、これ……私に帰れって意味じゃ」
「ありません。オレの罪悪感の問題です、すみません」

恐る恐るといった感じでこちらを覗きこむ表情が、可愛らしい。

一瞬、抱きしめたい衝動にかられながらも、謝罪が先だと頭を下げる。

「え? あれ……? ひょっとして、進藤くん……」

ようやくオレの下心からなる不誠実な行為に気づいたらしい。

───けれども。

「うわ、どうしよ……すごく嬉しい」

顔を上げたオレの目に入るのは、幸せそうに微笑む叶絵さん。

「……家、早く戻っていいですか」
「あっ、うん! ……走っちゃう?」

いたずらっぽく笑う叶絵さんにうなずいて、オレは彼女の手を引き走りだした。