翌朝、やることがあるからと翠くんは先に学校へ行ってしまった。

 その翠くんの――


『ゆっくり登校しておいで』


 という言葉に甘えるように、私は蒼くんと一緒にゆっくり歩いて登校している。


「昨日の今日で、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。昨日も蒼くんに助けてもらったからそこまで酷いことされてないし……それに、今日は部活があるわけじゃないから」


 心配する蒼くんに笑顔を見せて答える。

 部活がなければ、会おうとしない限り名倉先輩に会うことはないだろうから。

 ただ、明後日は部活のある日だ。

 何事もなかったように振る舞える自信は無いし、何より名倉先輩の『また、次の部活にね』という意味深な言葉が気になる。

 まさかとは思うけれど、またああいうことをしようって意味だとしたら……。

 考えただけでゾッとする。

 これはもう部活を辞めるしかないのかな?

 演劇部、好きなんだけどな……。

 しゅん、と元気をなくしながら学校に到着すると、なんだか生徒玄関の辺りが騒がしいことに気づいた。


「なんだ?」


 一緒に靴を履き替えた蒼くんも不思議そうに騒ぎの方へ意識を向ける。

 すると、丁度教室へ向かうための階段の辺りに、生徒が団子のように固まっているのが見えた。