「ひーよーりーっ! 日和、起きてってばー!」 どこかから、私を呼ぶ声が聞こえる。 肩を強く揺さぶられたところでハッと目を覚ますと、見覚えのある顔がこちらに向かってニッと笑いかけた。 「おはよー、日和。もうすぐ昼休み終わっちゃうよ」 先ほど私を起こした時と同じ声でそう話しかけるのは、同じクラスの的場(まとば)紗奈(さな)。 栗色のボブヘアがよく似合う、人懐っこくて天真爛漫(てんしんらんまん)の女の子だ。 ついこの間の4月。 高2への進級に合わせて転校してきたばかりの私に、よくこうしておしゃべりに来てくれる。